再生医療を加速するための「超細胞」とDDSの開発研究
本研究部門設立に至る経緯・背景
東京理科大学では、早くからドラッグデリバリーシステム(DDS)に関する研究が進められてきました。本研究部門は、2003年に総合研究所内に設置された「DDS研究部門」に端を発します。その後、2015年からは「再生医療とDDSの融合研究部門」として、再生医療を視野に入れた研究と、難治性疾患に対する薬物療法の高度化を目指すDDS開発が行われてきました。これらの研究活動を基盤に、東京理科大学におけるDDS研究の伝統をさらに発展させるとともに、近年急速に進展している再生医療・細胞治療分野を指向した新たな研究展開を目的として、2020年度に「再生医療を加速する超細胞・DDS開発研究懇談会」を立ち上げ、2021年4月より本研究部門としての活動を開始しました。
本研究部門の目的・目標
本研究部門は、再生医療の加速を目的とし、治療目的で生体に投与される細胞の高機能化による「超細胞(superior cell)」の開発と、細胞を含む各種機能性分子の体内動態を精密に制御するDDS技術の創出を目標としています。標的とする疾患領域としては、呼吸器、脳、免疫、がん、骨などを想定し、これらの疾患に対する新規治療法の開発につなげることも視野に入れています。
本研究部門の構成メンバー・部門における役割
本研究部門では、以下の4つの研究グループが相互に連携し、再生医療を加速する超細胞およびDDS技術の開発を推進します。
(1)超細胞・DDS開発グループ
本グループでは、細胞や各種生理活性物質の体内動態制御を目的としたDDSの開発に加え、超細胞の設計および開発を行います。具体的には、細胞への新機能の付加、細胞スフェロイドやオルガノイドの構築、エクソソームに代表される細胞外小胞や細胞小器官の利用といった多角的なアプローチにより、既存の細胞機能を凌駕する「超細胞」の創出を目指します。また、開発したDDS技術を超細胞に適用し、疾患モデル動物などを用いた評価により、その有用性を検証します。
(2)細胞機能制御システム開発グループ
本グループでは、細胞機能を制御するための新規分子の創製や、再生医療および細胞治療を補助する多様な機能性新素材の開発に取り組みます。開発された分子・素材は他のグループに供出され、その評価結果をもとに、より高機能な分子・素材の再設計・改良を進めます。
(3)物性制御・評価グループ
本グループは、超細胞・DDS開発グループおよび細胞機能制御システム開発グループで開発される各種機能性分子や素材の物性評価を担当します。評価によって得られた情報は各グループへフィードバックされ、超細胞およびDDSの機能最適化を支援します。
(4)細胞・臓器再生グループ
本グループでは、肺や骨などを対象に臓器再生のメカニズム解明および治療への応用を進めます。また、超細胞やDDSを適用した際の免疫系との相互作用の解明も行い、治療戦略の最適化に貢献します。
図1に、各グループの構成メンバーおよび役割を示します。これらのグループが有機的に連携することで、本学におけるDDS研究の研究資産を継承しつつ、新たな段階の共同研究へと発展させることを目的に、再生医療を加速する超細胞・DDS開発研究を推進します。
