ナノ技術とその量子情報およびエレクトロニクス応用
背景
近年、Googleとその後の中国科学技術大学による量子超越性のデモンストレーション、IBM の商用量子コンピュータの設立、D-Wave Systemの大型量子アニーリングマシンなど、量子情報処理は目覚ましい進展を遂げています。以上は全て超伝導量子ビットをプラットフォームとしたシステムですが、それ以外にも、イオン、冷却原子、光、半導体などの量子コンピュータシステムも世界中で活発に研究が進められています。
我々が目指すもの
研究の中心である超伝導量子ビットには,従来の古典的半導体回路と同じように、エラー(誤り)が発生します。例えば、外部雑音などによって、量子ビットの量子重ね合わせ状態が壊れてしまう現象(デコヒーレンス現象)がエラーの主な要因です。残念ながら現時点で最高性能を持つ超伝導量子ビットでも量子重ね合わせ状態が保たれる時間は数ミリ秒程度です。真の実用化という意味での量子コンピュータと呼ばれるシステムは、このような誤りに対する耐性を持ったシステムです。そこで本研究部門では、超伝導量子ビットを用いた様々な誤り耐性量子回路の開発を実施します。世界では2050年までに誤り耐性型量子コンピュータの出現が期待されていますが、その実現に向けて本研究部門もその実現に貢献します。
本部門では、超伝導ボゾニック量子ビットという新規な量子ビットの開発に成功して、これがスケーラブルな量子情報処理のプラットフォームであることを示しました。今後はこの量子ビットを使った量子誤り訂正の実証実験を計画しています。
集積性、操作性という観点では、超伝導量子ビット有利で、コヒーレンス時間が短いという弱点も、近年格段に改善されてきました。超伝導以外の物理システム、例えば光とかイオン、冷却原子、半導体といったものが研究されています。我々の研究部門でも、光量子ビットの量子回路を追求しています。
ムーンショット型研究開発事業
2020年度に、蔡教授を代表とする課題「超伝導共振器を用いたボゾニックコードの研究開発」が、国のムーンショット型研究開発事業に採択されました。2025年度まで続くこのプロジェクトには、髙柳、渡部、橋爪が参加します(https://ms-iscqc.jp)。