カーボンナノチューブとグラフェンに関わる基礎研究および応用研究を展開します
カーボンナノチューブやグラフェンは、炭素の6員環ネットワーク(蜂の巣構造)で構成される低次元(線状および平面状)の物質です。炭素間の共有結合により、単層であっても自己保持できる機械的な強靭性と化学的な安定性を有しています。また、炭素原子の幾何学配置と低次元性にともなう特異な電子構造を持つことから、3 次元の結晶にはない物性が現れます。グラフェンが2010 年のノーベル物理学賞の対象になったように、カーボンナノチューブ、グラフェンをはじめとするナノカーボンは現在の基礎科学の大きな研究対象となっています。今後、ナノカーボンは産業革命における鉄、情報通信革命におけるシリコンに続き、新たな産業上の革命を担う主役となることが期待されます。
本研究部門は、ナノカーボンに関して先進的な研究を行っている物性理論、物性実験、電気工学、熱工学、生物物理それぞれの分野の専門家が、相互の情報交換および連携によりナノカーボンに関する基礎から応用までの研究を推進することを特色とします。これら先進的研究者が1つの研究部門に集結することにより、テーマ間のシナジー効果が発揮され、研究が大きく加速・発展することが期待されます。
研究テーマ
ナノ空間の物質科学
・ 構造が制御されたナノ空間として1 本のナノチューブを用いた分光実験・電子顕微鏡観察および分子動力学シミュレーションから、水分子をはじめとする各種分子とナノチューブのナノスケールにおける相互作用を調べ、ナノ空間における物質の状態を解明します。また、ナノチューブのポリマーなどとの複合材料としての応用研究を行うと同時に、その際重要になってくるナノチューブと他の物質との相互作用の理解を目指します。
・ ナノチューブに吸着された分子や原子、導入された欠陥を含めた広義の複合構造体に対し、その基礎物性を第一原理電子状態計算と、モデル計算の手法から明らかにします。
ナノカーボン・ハイブリッド材料
・ ナノチューブと生体分子(DNA、蛋白質)の複合体についての構造物性研究を行います。具体的には、カーボンナノチューブの表面をDNA 等で機能化した新たなナノバイオデバイスを作製し、生体分子の構造物性が保持されているか、さらには生体分子認識能が保持されているかを検証します。
・ 複合構造において本質となるホスト-ゲスト間の相互作用の解明、その物性に及ぼす影響を明らかにします。
ナノカーボンの形成制御
・シリコンや石英基板上での垂直配向成長、単結晶水晶基板上での水平配向成長といった様々なナノチューブの合成技術をもとに、より詳細な構造の制御を目指し新たな構造制御技術の開発を進めます。
・新しいナノカーボン合成法としてアーク放電法に着目し、溶液中やそれ以外での合成雰囲気の検討および放電電極を異種電極に変えた場合を含めて、新しいナノマテリアルの創製方法の開発研究を行います。またグラフェンの新作製方法を開発します。
ナノカーボンの物性と機能
・ ナノカーボンを活用したエネルギー変換の物理と材料開発およびデバイス応用を行います。
・ ナノカーボンを活用したペーパーエレクトロニクスの基盤を構築します。