疾患の新たな予防・治療法を確立する「データサイエンス医療」の創生
目的
「データサイエンス医療」の実現は、疾患の根治に向けた予防・治療法を確立する上で欠かせないもになりつつある。医療は、様々な医療ビッグデータを分析し、患者を特定の集団に分類(層別化)して、患者集団毎に適した治療を精密に選択する医療や、症状が出る前のなるべく早い段階から兆候を捉えて介入する予防的先制医療など、精密医療(Precision Medicine)の確立が進められている。しかしながら、現状では、様々な問題点が障壁となり、精密な医療提供に限界がある。本研究部門の設置目的は、国立がん研究センター先端医療開発センター(NCC-EPOC)や慈恵医科大学と本学との連携を中心とし、医療の課題について、データサイエンス手法(機械学習、情報処理、情報理論、確率、統計解析、数理)と疾患の生物学的実験手法を融合させて解決をはかる。それにより、様々なオミックスデータ、生化学データ、画像データや医療情報、公共の関連データを統合した「データサイエンス医療」の本学での基盤整備を進める。加えて、医療現場における様々な医療ニーズについてデータサイエンス手法を応用して解決を図る。さらに一連の研究活動の成果を社会に還元するための社会実装を目指す。これにより、疾患の予防、健康寿命の延長と患者の高いQOL や社会復帰の実現が期待される。
特色
本研究部門は、NCC や慈恵医科大学と連携し医療ビッグデータのデータサイエンス研究を切り口として新たな患者層別化と治療法の提案、数理モデル化を進めるとともに、医療ニーズの解決を図り、将来の社会実装を目指す。データサイエンス医療の実現には、様々な克服すべき課題がある。そこで、本学に
蓄積しているデータサイエンス手法のノウハウを駆使して、解決するとともに、新たな治療薬や治療法の提案に向けた基盤整備を進める。これらを実現するための本学に特徴的なデータサイエンス手法として、異なったプラットフォームの統合技術、高速論理型機械学習器、欠測項目を含むデータ活用に加え、医療統計や情報理論を切り口とした疾患関連因子のデータマイニング等が挙げられる。一連の研究により、データサイエンス医療の理論的基盤のみならず、新規学問領域の創出が可能となる。さらに、進行中の医療ビッグデータを基盤とした医療革命に適応し、発展させる次世代の「データサイエンス医療」の教育研究者の育成も進める。
位置付け
医療の課題をデータサイエンス手法で解決する試みは世界的な潮流となっている。我が国でもこのような取り組みが活発に行われている。本研究部門は、医療ソースとニーズはNCC や慈恵医科大学と公共の医療データベースを利用するものの、課題の解決を図る手法は、東京理科大学に蓄積されたデータサイエンス手法によることを特徴とする。これは本学には、専門性の高い様々な分野のデータサイエンス専門家と疾患生物学の専門家が在籍していることで可能になっている。他グループによるグローバル研究者ネットワークにくらべて規模は小さいが、研究者の専門の多様性を確保し、密接に連携して、柔軟に研究活動を進めることを可能としている。