マルチハザード都市防災研究拠点
拠点設立の背景と経緯
世界各地では,地震や津波,洪水,林野火災,熱波など様々な災害が発生しています.また,我が国は,様々な自然災害が頻発する立地にあり,過去にも1923年関東大震災や1995年阪神淡路大震災,2011年東日本大震災,2024年能登半島地震などが生じており,今後は首都直下地震や南海トラフ地震,スーパー台風も想定されています.これらの大きな特徴は,地震と津波,洪水,高潮,強風,火山噴火,火災など複数のハザードが同時期・同地域に起こる,という「マルチハザード災害」の発生が懸念されている.一つ一つのハザードでも大きな被害が生じるが,マルチハザードが発生すると,被害が激甚化し,年間国家予算以上の被害が想定されています.また,近年では,気候変動の影響が顕在化し,本来発生メカニズムが異なる地震と洪水等のマルチハザード発生確率の増加も懸念されます.これまでの防災研究・技術はハザード毎に確立・体系化されてきたが,これらをマルチハザードに対応した学問体系に昇華し,理学・工学,生命科学,人文・社会科学などの様々な分野が連携した総合的な都市防災学の創出が必要不可欠です. 本学では,このような背景のもと,2022年に日本学術会議が公募した「未来の学術振興構想」に対して「マルチハザード都市防災学の創出と実践」として応募し,2023年に採択されました.その研究体制の受け皿として,本拠点が2023年に設立されました.
拠点が目指す方向性
本拠点では,自然災害や大火災等のハザード毎の先行研究をマルチハザードに対応した学問体系に昇華し,異分野の研究者が連携・融合して総合的な都市防災学のブレークスルーを創出・実践し,持続可能でダイバーシティに配慮して誰一人取り残さない安全・安心な社会の構築に貢献することを目指します.本学には,「様々なハザード(地震や火災,洪水など)に関する防災研究者が多くいる共に,データサイエンスの研究者も多数います.このような本学の強みを生かして,「様々なハザードの防災研究者」及び「防災研究者とデータサイエンス研究者の融合」という2つの横串型連携により,新たな都市防災学を創出・実践に取り組みます.また,得られた学術的知見や成果を社会実装するために,行政機関や民間企業と積極的に連携します.
研究体制
本拠点では,設立当初は学内の10名のみのメンバーでしたが,現在は学内36名,学外2名の研究体制となっています(2025年7月時点).本拠点は理科大ならではの特徴を生かすべく,メンバーの専門はとても多様です(図1).ハザードとしては,地震,津波,洪水,火山,火災,感染症,熱波と多岐にわたっています.また,元々防災・減殺を専門としない先生方が本拠点は多く在籍しており,データサイエンスだけでなく,ドローン・画像解析,災害情報・交通,材料・センサ開発,VR,まちづくり,避難所・医療,リスク評価の専門家から構成されています.このように,ハザードだけでなく,専門も「マルチ」となっています.これらの多様な専門家が協働・連携して研究を進めており,毎年10以上の共同研究が実施されています.

コンソーシアムの設立
本拠点の成果を社会実装するために,民間企業や行政機関との連携を行うべく,コンソーシアム準備会を2024年5月を立ち上げ,2025年4月には正式なコンソーシアムを設立しました.2024年末には31社が加入し,定期的な勉強会や交流会を行い,拠点メンバーとの交流を深め,共同研究の検討などを進めています.本コンソーシアムでは,共創・共育・共生という3つの「共」を活動の柱として,マルチハザード発生下でも「ウェルビーイングで安全・安心な社会構築」に貢献する(図2).
