物質と水との接点「水界面」の最先端研究に特化した国際的コア研究拠点
センター設立の背景
「水」は、生命活動の基盤を形成する重要な物質であり、人間を含めたほとんどの生命体は水の恩恵なしに生きていくことはできません。酸素や養分、老廃物の輸送媒体や、細胞や組織内部の構造化と維持を担うなど様々な機能を有しております。また、各種の生活・産業分野においても、飲用、洗浄や浸漬、塗布などの多くの工程において不可欠であり、有史上最も長く頻繁に利用されてきた物質といっても過言ではありません。しかしながら、その性質や機能については未解明な部分が多く、なかでも、物質表面と水の相互作用が強く関わる「水界面」については特に理解と制御が難しい領域です(図1)。
この課題に取り組むために、2016 年11 月〜2021 年3 月まで、ウォーターフロンティアサイエンス& テクノロジー研究センター(Water Frontier Science & Technology Research Center, W-FST)が設立され、活発な研究活動を行ってきました。この活動を通じ、物質や材料表面の特性や機能発現に決定的な役割を果たす水の研究が非常に重要で、特に産業界からのニーズが高く、発展的に継続すべきであるという結論に至り、改組を行い、2021 年4月にウォーターフロンティア研究センター(Water Frontier Research Center, WaTUS『読み:ウォータス』)を設置し、さらなる研究活動の推進を行っております。本センターのロゴ(図2)では、水分子と連続体、異相界面を包含して「水」を表現しています。
センターの活動戦略
本センターでは、分野横断型の研究体制の下、活動のフィールドとして、
(i) 水界面に関する学術研究のさらなる深化
(ii) 国際的コア研究拠点の形成
(iii) 産業界とともに問題解決を目指す水研究のワンストップサービスの確立
(iv) 水研究を通じた理科大の可視化
の4 項目について重点的に活動を展開しております(図3)。
「水界面」に関する最先端研究を遂行しながら世界随一の研究拠点を形成していくためには、本センターは国内外の学術界における研究者が集う場であることはもちろんですが、それだけでなく、産業社会が抱える様々な課題にソリューションを提供する、問題解決型の研究組織として確固たる存在感を出していくことも必要であると考えています。そのためには、センターに関わる研究者達が一丸となり、学術研究や基礎研究の推進に加えて、企業との連携を強化していくことが重要です。
センターにおける研究体制
本センターでは、「水界面」の研究を進めるために、従来の学問領域の垣根を超えた学際的な共同研究を推進します。そのために、研究アプローチとして、材料創成、計測分析、理論解析、の3 項目、そして、研究ターゲットとして、物質と水、生命と水、環境と水、の3 項目が有機的に絡み合う3 × 3 方式のマトリックス型の研究ユニットを編成する点が特徴的です(図4)。このマトリックス型の編成では、機能性材料を創生する研究者、高度な計測・分析技術を開発する研究者、理論解析やシミュレーションを専門とする研究者が三位一体で共同研究を実施し、各研究ターゲットに取り組む体制となっています。各々が自身の得意分野を活かしながら連携を深めることで、シナジー効果を生み出すことがその狙いです。また、各メンバーが所属するユニットは便宜的なものですので、その枠に囚われることなく自由に連携し合いながら、水界面の研究を進めていきます。
物質と水
物質・材料サイドから水との関わりを意識した研究開発を進める。主としてマテリアル研究を核とする。
生命と水
水と人や医療との関わりを意識した研究開発を進める。バイオ分析、生体医工学、医療貢献を志向する。
環境と水
人間社会を取り巻く環境と水との関わりを意識した研究開発を進める。地球科学、省エネルギー技術開発などを対象とする。
また、研究活動のアウトプットや研究者間の交流を図るため、ウォーターフロンティアシンポジウムやイブニングセミナーなどのイベントも開催しております。他にも、研究成果を学会や展示会を通じて外に広く発信しています。