N2 などを原料として、われわれの生活に役立つ燃料や化学製品を作る化学反Tokyo University of Science 図 1 に示すように、グリーン水素があれば化石資源を使わずに、二酸化炭素を炭素源としていろいろな燃料や化学製品を製造することができます。このように、再生可能エネルギーを使った水分解で製造された水素(グリーン水素)製造法、および水を電子源とした二酸化炭素の資源化プロセスを開発できれば、資源・エネルギー・環境問題を解決できると言っても過言ではありません。また、化学肥料であるアンモニアを合成することもできます。これらの反応は人工光合成と呼ばれ、太陽光エネルギーを用い、安定な分子である H2O、CO2、応です。この反応では、光エネルギーが蓄積可能な化学エネルギーへと変換されます。このようなエネルギー蓄積型の反応をアップヒル反応と呼んでいます。代表的な人工光合成として、i)水を分解してグリーン水素を製造する反応、ii)水と二酸化炭素を水素源(電子源)と炭素源として有用物質を合成する反応、iii)水を水素源(電子源)として窒素をアンモニアに変換する反応などが挙げられます。この人工光合成に活性な光触媒の開発が切望されています。 当拠点では、ワイドバンドギャップを持つ紫外光応答性光触媒(TiO2、SrTiO3 など)に遷移金属をドーピングすることにより、多様な可視光応答性光触媒を開発してきました。その中で、SrTiO3:Ir,Sb,Al が、約 660nm までの長波長の可視光に応答して水を分解する光触媒であることを見いだしました。 光エネルギー変換反応である人工光合成(アップヒル反応)を考えた場合に、二酸化炭素還元に対して水を電子源・水素源に利用することが不可欠です。アルカリ土類金属イオン(Ca2+, Sr2+, Ba2+)をドーピングした NaTaO3 に Ag助触媒を担持した光触媒が紫外光照射下で二酸化炭素還元に高い活性を示し、約 90% という高い一酸化炭素生成選択率を与えることを見いだしてきました。水溶液中での反応でありながらも、このように一酸化炭素を高選択的に生成することは特筆に値します。さらに、助触媒を検討することにより、Rh-Ru 複合金属などがメタン、エタン、プロパンという炭化水素を生成する助触媒であることがわかってきました。一方、BiVO4 酸素生成光触媒、還元型酸化グラフェン(RGO)電子伝達剤、(CuGa)0.5ZnS2 還元光触媒を組み合わせた Z スキーム系では、水中にこれらの粉末を懸濁し二酸化炭素を吹かして可視光を照射すると、水素に対して一酸化炭素が 10%程度の選択率で生成します。この Z スキーム型光触媒系では、520nm までの可視光を使うことができます。図1 グリーン水素の製造法と用途39カーボンバリュー研究拠点- グリーン水素製造および水を電子源とした二酸化炭素の資源化に活性な光触媒 -資源・エネルギー・環境問題を解決する人工光合成型光触媒の開発
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