火災から人命と財産を守るための安全技術およびそれを支える火災科学に関する研究 本学では、先人達が残してくれた火災科学分野の優れた伝統と実績を継承しつつ、21 世紀 COE プログラムからグローバル COE プログラムを通して大幅に発展させ、その成果として、アジア初の火災科学に特化した大学院「国際火災科学研究科」修士課程を 2010 年 4 月に、博士後期課程を 2012 年 4 月に開設しました。 火災科学・安全の分野に係わる職種である建築、消防、材料、防災設備、損害保険などの社会人、これらの職種における専門家(消防官や防火技術者など)を志す一般学生や留学生を対象に、社会的ニーズの高い建築防災、都市防災、消防防災に係わる高度専門的職業人を養成することに重点を置き、火災科学研究所の保有する各種実験装置を最大限に活用し、火災実験を通して、基礎理論を習得する場として、教育・研究を行っています。 2018 年 4 月には、他専攻とも連携をはかりながら、より強固な教育・研究体制とするため、大学院理工学研究科の専攻として再構築を図っています。 これにより、名実ともに世界最高水準の教育研究拠点を確立し、維持していくことで、火災科学分野に求められている様々な社会的需要に応え、社会的貢献を果たしていきたいと考えています。 火災科学研究所では、火災安全技術の発展と信頼性の向上を図るため、国土交通省の指定性能評価機関の指定を受けた指定性能評価機関として、建築物の構造方法について、建築基準法に基づく国土交通大臣認定を受けるために必要な性能評価を実施しています。 性能評価は、国土交通大臣の認可を受けた業務方法書に基づき性能評価の業務分野の専門的知識を有する評価員によって行われます。写真 1 実験棟外観松山 賢環境・情報・社会Research Promotion Plan Tokyo University of Science 東京理科大学における火災科学研究 火災科学研究センター実験棟https://gcoe.tus-fire.com/kmatsu@rs.tus.ac.jpCenterforFireScienceandTechnology 本学では、火災から人命と財産を守るための安全技術およびそれを支える火災科学に関する研究を推進する研究拠点として、1981 年に「総合研究所火災科学研究部門」が設立されました。これは、約 50 年前に「建築防災学の講座」が建築学科の創設当初に設置されたことに端を発します。こうして、本学では、かなり早い時期に、他の大学に例を見ない火災科学に関する研究と教育の基盤が整備され、この基盤から多くの実績が蓄積されてきました。この成果は、世界で最も権威ある国際火災安全科学学会から名誉ある2つの賞を受賞したことで立証されたといえます。一つは「火災安全技術の発展に寄与した、いわば研究上の功績」に対する賞で、もう一つは「火災研究者を多数輩出した、いわば教育上の功績」に対する賞であります。また、わが国では、これまでに多くのビル火災が発生し、多数の犠牲者を出してきましたが、こうしたビル火災の鑑定には、大半が本学の火災科学研究部門のメンバーが参加しています。 こうした実績が評価され、2008 年度〜 2012 年度「先導的火災安全工学の東アジア教育研究拠点」が、グローバル COE プログラムに採択されました。これは 2003 年度〜 2007 年度に実施した 21 世紀 COE プログラム「先導的建築火災安全工学の推進拠点」の成果や大学の支援体制が高く評価され、国際的に抜群の拠点づくりが可能であると認められたことによります。 2012 年度には、アジア諸国の火災安全に係る関係者により“FORUM for Advanced Fire Education/Research in Asia”を設立し、火災科学・火災安全工学に関する世界最高水準の教育研究拠点を確立し、「火災安全工学の発展」および「若手研究者や専門技術者の育成」のための活動を展開しています。 2013 年度〜 2017 年度には、私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「専門知の共有に基づくアジアの火災安全情報拠点― 情報化社会における新しい火災安全のあり方 ―」に着手、アジアの火災安全情報のネットワーク構築を行うことに重点を置き、アジア諸都市の火災リスク抑制を連携して実現する研究拠点として、21 世紀の課題である科学のグローバル展開を実現してきました。 2018 年 4 月からは、設置期間を定めないセンター「火災科学研究所」として東アジアを代表する火災科学・火災安全工学拠点の役割を担っています。 現在は、「変容する空間・材料利用に対応する火災安全工学」を軸として、①「火災物理・化学現象」、②「火災時の人間挙動(心理・生理・行動)」、③「性能的火災安全設計技術」に関する研究、そしてそれら要素を総合化し実用化を図る④「変容する空間・材料利用対応の火災安全性能評価・設計体系の確立に関する研究」に携わる 4 分野について研究活動を展開しています。 21 世紀 COE プログラムの採択を契機とし、大学に付属する火災科学研究専用施設の中で世界トップレベルの規模と機能をもつ実験棟として 2005 年3 月に竣工しました。野田キャンパス内に位置し、建築面積約 1500㎡、延べ面積約 1900㎡、高さ約 20 mの規模を誇ります。(写真1)火災科学分野において世界を先導する卓抜な研究の推進が可能な機能を備えており、最先端の研究活動を支えています。さらなる発展に向けて、逐次設備を整備することで機能的にも充実してきています。20所長創域理工学研究科国際火災科学専攻 教授KenMatsuyama設立2004年4月火災科学及び火災安全工学の発展および若手研究者や専門技術者の育成を推進する世界最高水準の教育研究拠点を確立し、火災安全に関する様々な社会的需要に応え、社会的貢献を果たす図 1 研究分野の相互関係と活動体制図 2 ホームページ「火災科学研究所」目的今後の展開 大学院国際火災科学専攻と火災科学研究所の使命 性能評価業務安全・安心は社会発展の要です。東アジアでは急激な都市化が進行し、石油化学素材等の燃焼を伴う近代都市施設の火災・爆発による重大な死亡・損害が多発し、被害が巨大化する危険に直面しています。私たちは、この喫緊の事態に十二分に対処していく義務と、火災事故の変質を予測し、防止するための革新的教育研究システムづくりに一層努めていく所存です。火災科学研究所
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