2024-2025_総合研究院パンフレット(和文)
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近年、核酸医薬の研究開発が活発化しており、核酸医薬を標的とする臓器に効率よく送達するDDS技術が必要不可欠となってきています。20量体程度の二本鎖RNAからなる核酸医薬のsiRNAは、一般的に細胞膜透過性が低く、効率的に細胞に取り込まれないことが課題となっています。これまでに私たちは、二本鎖RNAが形成する二重らせん構造を特異的に認識して結合する人工カチオン性ペプチド、Dab8(L-2,4-ジアミノブタン酸8量体)を開発しました。Dab8は二本鎖RNAを熱力学に安定化(一本鎖に解離しにくく)するだけでなく、核酸分解酵素による分解から保護する機能も有しています。私たちカチオン性人工ペプチド(Fol-Dab8)の構造Fol-Dab8を用いるsiRNAの膵がん細胞特異的なデリバリーは、Dab8に葉酸を結合させた分子、Fol-Dab8を合成し、siRNAと複合化すると、膵がんなどの葉酸受容体が高発現している細胞へsiRNAを効率的に送達できることを見出しました。膵がん細胞の増殖抑制効果を有するsiRNAとFol-Dab8を複合化して、ヒト膵がん担がんモデルマウスに静脈投与したところ、がん細胞への効果的な集積と、顕著ながん増殖抑制効果が確認されました。これは、抗がん剤を用いる標準療法よりも高い効果を示しました。私たちは、この技術を用いて、難治性がんの根治を可能にする医薬の創出を目指しています。35−siRNAを膵がん選択的送達する−難治性がんを標的とする核酸医薬の開発

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