本研究センターは、独自の核酸合成技術を基盤とした核酸創薬ベンチャーの設立と核酸医薬の臨床開発実績のある和田をセンター長とし、核酸医薬の動態制御(西川元也教授)、アンチセンス核酸医薬の設計と応用(鳥越秀峰教授)、核酸医薬の高分子キャリア(大塚英典教授)、核酸医薬分子の製剤化(花輪剛久教授)、核酸医薬を用いる免疫系の制御(西山千春教授)、核酸医薬の代謝(樋上賀一教授)、核酸医薬によるがん治療(秋本和憲教授)、核酸医薬の標的探索と設計(宮崎智教授)、RNA編集創薬(櫻井雅之講師)、核酸医薬の免疫応答(原田陽介准教授)、核酸関連分子の合成(吉田優准教授)、核酸医薬の新規DDS構築(草森浩輔准教授)、核酸医薬のDDSに関わるデバイス設計(秋田智后講師)という組織構成となっています(図)。既にセンター内では研究者間の共同研究が進行、または計画されています。 本センターでは、独自の標的に対する独自の核酸医薬の開発を推進します。研究課題は以下の通りです。1. ホスホロチオエート核酸に代わる次世代の核酸医薬分子として期待されているボラノホスフェート核酸の合成手法を確立2. 核酸医薬に結合して生体内における安定性向上に有効なカチオン性人工オリゴ糖およびカチオン性ペプチドの大量合成技術を確立3. ナノ構造化核酸の立体構造依存的な細胞相互作用の解明を通じた、細胞選択的核酸デリバリーシステムの構築4. 従来の低分子医薬では困難であった創傷治癒や膀胱癌に対する治療薬として、関連遺伝子の発現を制御するアンチセンス医薬の開発5. 特定の疾患に有効な核酸医薬の新規製剤化手法の開発6. 核酸医薬の新たな標的疾患として、老化や、老化に伴う疾患、代謝異常の制御を目指した研究7. 自己免疫疾患やアレルギー、移植時の拒絶反応の制御を目指し、免疫担当細胞の機能やそれに関わる遺伝子の発現制御機構を解析し、それらを制御する核酸医薬の開発8. 新規カチオン性分子とsiRNAの複合体を用いた有効な乳がん治療薬の開発9. 疾患の標的となるタンパク質をコードするmRNAや非コードRNAの配列を、バイオインフォマティクスとAIを活用して探索する技術の開発NucleicAcidDrugDiscoveryCenter 2014年度から2018年度まで行われた樋上賀一教授をセンター長とするトランスレーショナルリサーチ(TR)センターの活動の中で、特に優れた成果を挙げた研究分野であり、かつ今日における社会的な要請と注目度の高いものとして、核酸医薬関連の研究分野があげられます。本学には、核酸創薬の分野で世界的に活躍している研究者が複数存在し、それらがみなTRセンターのメンバーとして研究に参画していました。2017年度に、西川元也教授を代表者として「核酸創薬DDS懇談会」が設置され、本学の核酸医薬に関わる研究者が参集し、核酸医薬の開発に関する議論を重ね、TRセンターの後継部門として、核酸創薬研究部門が2019年4月より発足しました。3年間の設置期間終了後、さらに2年間期間が延長されました。2021年には、部門長の和田が国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が推進する「次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業(RNA標的創薬技術開発)」の研究課題の一つである「革新的次世代核酸医薬(英語名:InnovativeNextGenerationofOligonucleotideTherapeutics、以下INGOTプロジェクト)」に採択されるなど、顕著な業績を挙げています。このように、研究はさらに進展・加速しているため、研究部門から研究センターに発展的に改組することを計画し、2024年4月より発足することとなりました。さらに、部門の研究成果を基盤として、本学、東京大学、慶應大学、東京医科歯科大学の研究者をファウンダーとする創薬ベンチャーが2023年9月に設立されました。また、東京医科歯科大学に設置された「核酸・ペプチド創薬治療研究センター(TIDEセンター)」と密接に連携し、東京圏バイオコミュニティ(GTB)における核酸創薬の拠点形成を目指しています。 核酸医薬は、化学合成されたDNAやRNA誘導体からなる医薬であり、疾病に関連するDNA、RNAあるいはタンパク質を標的とします(図1)。そのため、核酸医薬の開発に必要な研究分野は多岐に渡りますが、本学には各分野における極めて優れた研究者がおり、本センターではそれらを結集することにより、本学独自の核酸医薬の開発が推進できるという大きなシナジー効果が期待できます。本研究センターでは、従来の核酸医薬品と比較して、有効性、安定性、安全性に優れる新規核酸誘導体を開発し、また、核酸に結合して安定性や体内動態を改善する新規キャリア分子、製剤技術を確立することを目指します。また、それらの核酸医薬分子の標的として、がん、免疫系、代謝系、に関わる疾患領域を選び、新規核酸医薬を用いた治療法の開発につなげることを目標としています。このように、本学の核酸創薬に関わる優れた研究者が本部門に結集し、独自の標的に対する独自の核酸医薬の開発が推進されることが期待されています。目的今後の展開図1 核酸医薬による遺伝情報の制御設立2024年4月核酸医薬の本格的な実用化に向け、新規化学修飾型核酸合成法の確立、核酸医薬を安定化する人工カチオン性分子の開発や、DDS、製剤化手法の確立を通じ、新たな標的疾患に対する核酸医薬創出を目指します本学の核酸医薬に関わる研究者の総力を結集し、多角的に連携していくことで、本学独自の核酸医薬の開発が期待されますtwada@rs.tus.ac.jp研究センター長薬学部生命創薬科学科 教授TakeshiWada15本研究センターは本学の学部の垣根を越え、核酸医薬を専門とする、あるいは核酸医薬の実用化に不可欠な関連研究を行う研究者が集い創設されました。前身となるTRセンター及び核酸医薬創薬部門の活動を通じて生まれた、学内外を問わないネットワークや共同研究を継承しながら、理科大発の画期的な核酸医薬の創製を目指します。低分子医薬、抗体医薬に続く第3の医薬として期待される核酸医薬の創製和田 猛 核酸医薬研究センター設立の背景 核酸医薬研究センターの目的、目標 核酸医薬研究センターの構成員 核酸医薬の現状と本センターの研究課題核酸医薬研究センター
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