2023-2024_総合研究院パンフレット(和文)
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カーボンニュートラル社会を実現するには、二酸化炭素を炭素源として有効利用する「カーボンバリュー」科学技術を開発することが必須です。本学教員が得意とする光触媒や二次電池などの要素技術を活用することにより、カーボンニュートラル、さらには資源・エネルギー・環境問題解決に向けた科学技術の確立に邁進します。Carbon Value Research Center 地球温暖化に伴う気候変動への懸念から、世界的に脱炭素化に向けた動きが加速しており、日本政府も2020年10月に「温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを2050年までに実現する」と宣言しました。そして、カーボンニュートラルへの挑戦を経済と産業の好循環につなげるグリーン成長戦略が策定されました。翌2021年には、本学もメンバーとして参画した「カーボンニュートラル達成に向けた大学等の貢献に係る学長等サミット」が開催され、ここでの議論を基に「カーボンニュートラル達成に貢献する大学等コアリション」が設立されています。このような社会的背景から、「カーボンニュートラル」に関わる研究分野を本学の戦略的重点分野として位置づけ、本学が強みを有している光触媒を用いた人工光合成、二次電池、水素利用分野等の研究者を集結したカーボンバリュー研究拠点(CV拠点)を2022年1月に設立いたしました。 CV拠点では、本学教員が強みとする光触媒や二次電池などのサイエンス・テクノロジーを駆使すると同時に、外部機関との連携・共同研究を通じて、カーボンニュートラルに繋がる本質的な要素科学技術を開発します。また、研究成果に基づくトータルシステムを社会実装化し、地球が抱えている資源・エネルギー・環境問題の解決に貢献することを目指します。 CV拠点は、現在は学内教員10名ほどで構成されています。「人工光合成のための光触媒・半導体光電極の開発」「再エネ電力を用いた電気化学的CO2還元のための電極触媒の開発」「再エネ電力貯蔵のための二次電池の開発」、「グリーン水素利用のための燃料電池における白金低減技術の開発」に取り組んでいきます。さらに、その他関連技術としてLife Cycle Assessment (LCA)などのシミュレーション、CO2貯蔵・吸蔵、生物学的プロセス、および計測技術の研究も進めていきます。そして、研究を加速するために、外部機関との多角的な連携を進めていきます。06目的今後の展開図1 CV拠点が目指す将来像設立2022年1月グリーン水素製造や二酸化炭素を炭素源として用いた有用物質合成のサイエンスとテクノロジーの研究に取り組むことにより、カーボンバリュー科学技術を開発することを目的とします光触媒や電池などの要素技術を基礎としたトータルシステムを構築・社会実装し、地球が抱えている資源・エネルギー・環境問題の解決に貢献していきます a-kudo@rs.tus.ac.jp図2 CV拠点で取り組む研究課題研究拠点長理学部第一部応用化学科 教授Akihiko Kudoグリーン水素製造 水素もカーボンニュートラルを考える上で必須な物質です。水素は燃焼しても二酸化炭素を排出しないため、クリーンなエネルギー源として注目されています。また、水素は化学工業における基幹物質としても不可欠です。現在社会では、石油・天然ガス・石炭などの化石資源を水と高温下で反応させる水蒸気改質により水素を工業的に製造していますが、化石燃料の枯渇や二酸化炭素排出という問題が依然として残ります。カーボンニュートラルの実現に向けては、再生可能エネルギーを使い水を原料としてグリーン水素を製造する技術開発が望まれています。CV拠点では、本学の強みである光触媒を用いた水分解によるグリーン水素製造のための人工光合成の研究を遂行しています。このようにして得られたグリーン水素は、化学工業での二酸化炭素の水素化反応による有用物質の合成に用いることができます。低炭素社会を支える電池の開発 グリーン水素をクリーンなエネルギー源として捉えた場合、燃料電池技術との連携も重要です。本拠点では、希少かつ高価な白金系触媒の使用量を抑えた(もしくは全く使用しない)燃料電池の開発に取り組んでいます。また、再エネ電力を電気化学反応に利用するためには、それを蓄える二次電池も必要です。そのため、リチウムやナトリウムイオン電池の開発も世界的に重要なテーマとなっており、CV拠点でも世界トップクラスの研究を進めています。電池技術は、電気自動車などへ利用されることでもカーボンニュートラルに貢献します。 拠点設立に至る経緯 拠点が目指すこと 拠点の研究体制工藤 昭彦カーボンニュートラルを超えるカーボンバリュー 〜グリーンH2製造とCO2資源化〜 拠点が取り組んでいる主な研究課題二酸化炭素の還元による高付加価値製品の製造 二酸化炭素を炭素原料とし、ガソリンやジェット燃料、オレフィンやアルコールなどの化成品原料など、高付加価値製品を製造するために、二酸化炭素を還元する技術開発が進められています。CV拠点では、太陽光と光触媒や半導体光電極を用いた人工光合成による水を水素源とした二酸化炭素の還元反応や、再生可能エネルギー由来の電力を利用した二酸化炭素の電解還元の研究に取り組んでいます。カーボンバリュー研究拠点

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