総合研究院パンフレット(日本語版)
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 複数の研究テーマが進行中だが、その一部を紹介する。損傷した神経軸索の再生を促進する因子の同定とその分子機能の解析 脳神経回路のネットワークの正常で柔軟な構成は、記憶・意思決定から行動・共感に至る高次脳機能の前提条件である。一方で、交通事故や高所からの落下などによる脊髄損傷の病態からわかるように成体哺乳類の中枢神経軸索は損傷からの再生能力を失っている。この再生能の喪失を人工的な操作で補強し、回路網を再建するための基礎研究はこの10年で急速に進み、マウスの視神経などでは再生が部分的に成功している。哺乳類の中枢神経の軸索再生を促進する分子としてTC10Gタンパク質を新たに同定した。また、この再生因子TC10は細胞膜への膜の付加という分子機能を持つことが知られていたが、微小管を安定化するという特異的機能も持っていることを見出し、そのシグナル伝達経路の解析を進めている。自閉症スペクトラム障害の分子基盤の同定 自閉症は、他者との共感・社会行動に障害があるとされるが、その神経回路や分子メカニズムについては不明な点が多い。自閉症の危険因子として染色体3p26の遺伝子欠失が示唆されているが、これらが神経の発達や認知機能、社会行動にどのような影響を与えるかについては不明である。安藤—小黒博士が開発した3p26遺伝子領域の3遺伝子(CHL1, CNTN6, CNTN4)多重変異マウスを用いて、社会行動を含む行動学的表現系、神経発達変化、遺伝子発現変化を解析することで、自閉症におけるこれら遺伝子の関与とその病態メカニズムの同定を検討する。これによりパラレル脳で目指す共感メカニズムの分子メカニズム解明を目指す。Parallel Brain Interaction Sensing Division 本部門は、複数個体の脳活動が集団形成プロセスにおいてどのように相互作用するかを明らかにすることによって、集団形成を支援し多様な個性が協働共生できる社会を目指して結集しました。これまで単一個体を研究対象としていた脳研究や技術開発を脱却し、複数個体の脳を対象とすることにより、集団形成プロセスや相互作用を明らかにする新しい学問分野『パラレル脳』を創生します。マウスやヒトを対象とした脳研究手法によって集団を形成する複数の個体の脳を同期(パラレル)計測し、脳研究の知見に根差した生体情報のセンシングや再現する技術を本学ならではの学際分野から提案することで、オンライン空間での集団形成や共生の支援も可能となります。さらに、共通したセンシング技術をマウス実験とヒト実験とで利用することにより、社会性動物に共通した複数の脳の間でおこる相互作用を数理モデルにより記述し理論的な背景の構築を目指します。目的今後の展開これまで単一個体を研究対象としていた脳研究や技術開発を脱却し、複数個体の脳を対象とすることにより、新たなセンシング技術の研究開発から集団形成プロセスや脳間ダイナミックスのモデル化を目指す多次元・多軸の研究者の共通言語を見つけるために公開セミナー・勉強会を多数開催することで、若手・学生の育成とともに研究者の融合を高める部門長理工学部機械工学科 教授Hiroshi Takemura本部門は、脳と神経情報・システムに関する学内の多次元・多軸の専門技術・情報を集中し、学外の関連研究者とも連携して多分野融合型の研究開発基盤を構築することで、複数個体の脳活動の協調や集団形成プロセスにおいてどのように相互作用するかを明らかにする理科大発の革新的学問分野『パラレル脳』の創出を目指します。設立2021年4月 takemura@rs.tus.ac.jp25 部門設立の背景と目的 研究組織と構成メンバー 研究テーマ紹介(抜粋)複数個体間の脳や個体内のいわゆるもう一つの脳との相互作用の機序解明を目指して竹村 裕パラレル脳センシング技術研究部門

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